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17.12.9

連載インタビュー第3回 平方元基(キャプテン・ハーロック役)

ハーロックが語る言葉の真実味を届けたい

ーー舞台『銀河鉄道999』〜GALAXY OPERA〜出演のお話を受けていかがですか?

誰もが知っていて語り継がれている『銀河鉄道999』にはロマンがありますよね。昨年、今年と、漫画原作連載40周年である『王家の紋章』をミュージカル化した作品に出演させて頂きましたが、少女漫画の世界観に比べると、『銀河鉄道999』は男性にとっても共感度が高い少年漫画で、その世界に自分が立てると思うと、どういう風に表現出来るだろうかと考えます。

電車が飛んだり、宇宙が煌めいていたり、見ている人があんなに想像力を掻き立てられるように描くことってなかなか出来ないと思うんです。今はCGなどの技術で色々な表現が出来ますが、1秒間に何枚のセル画を使うというような、当時の技術で作っているアニメーションは、今よりも画質こそ粗いですが、その分とても味があり、歴史があり、それが宇宙の壮大さなどに繋がると思いました。そのひとつの駒になれるのだったら是非なりたい。色々と難しいことは起こると思いますが、松本零二先生が漫画のなかで描かれている世界観をもってすれば、その大変なことはすごくちっぽけになる。あの世界観に委ねられてみたいと強く思います。

ーーキャプテン・ハーロック役を演じることについてはいかがですか?

実際にどこかに存在しているのではないか思うほど、明確にキャプテン・ハーロックのイメージがありますよね。だとしたら、僕が演じたらどうなるのか。僕だからこそのハーロックを作りたいと思いますし、俳優としても成長できる場所にもしたいです。もちろんビジュアルのバランスは絶対に死守した方がいいとは思いますが、それを超える程のイメージが付きすぎているというのが、怖さでもあり挑戦でもあるなと。ヒール役でもありますし、どうみても格好いい役ですが、そこをどう埋めていくかが自分のチャレンジです。

アッキー(中川晃教)が真ん中を張り、それぞれの役者が各キャラクター達をやる、その大きな枠のなかで、ハーロックはブレないでいたいと思っています。ジャングルジムのような、しっかりとした鉄の枠のような骨組みのなかで、鉄郎が自由に自分の成長をしていけるように、僕はその枠をきちんと作っていきたいです。鉄郎を見守る役として、数々の名言もありますが、ハーロックが語る言葉の真実味を届けたい。舞台でリアルな人間が言うからこそ、そこに真実味があり、お客さんが舞台と繋がるのではないかと思います。

 

壮大な物語に負けないぐらいの存在感で圧倒できるようにしたい

ーー初共演のキャストの皆さんに期待することは?

アッキーとお芝居で共演するのは初めてなのでとても楽しみです。寡黙だけれどちゃんと影響を与える人っているじゃないですか。ハーロックとしてそういう存在の仕方をして、初めてアッキーと舞台で絡むのも楽しそうだなと思いました。メーテル役のハルカさんは抜擢だと思いますが、どういうフレッシュなことをやってくださるのかすごく楽しみにしています。ハーロックは自分から仕掛ける役ではないので、物語を動かしていく皆さんがどう演じてくれるのかがとても楽しみです。アッキーは、おそらく自由にやると思いますし、そこから生まれたものを、他の人達がどう解釈して自分のなかに落とし込み、難しい芝居の漫画調のセリフを言うのか。型でやるのは簡単だと思いますが、そこにどういうきちんとした交流があるのか。アッキーと会ったことのない方々が、アッキーと会って芝居したときに、ハっとするお芝居をするのか、完成するまでの道のりがとても楽しみですね。

ーー中川さんと皆さんとの芝居の様子がどうなるかが楽しみなんですね。

どんな鉄郎になるか楽しみですよね!鉄郎の純粋な心の動きをどう見せてくれるのか。アッキーが等身大でやってしまうと、アッキーでしかないわけで、あの年齢まで下がるのか、違う表現でやるのかなど気になります。物語も彼がすべての発端ですし、すべての役と関わっていきますからね。そういう出会いを経てから僕と会うので、その過程が楽しみなんです。僕と会った時から何かが始まるということではなく、鉄郎のまわりで渦まいているものが、ハーロックを通して整理されていく。その一言一言がとても重く、寡黙のなかで言いたいことを素直にぽろっと言うのかなと思います。

ーーエメラルダス役の凰稀かなめさんの印象はいかがですか?

凰稀さんが宝塚で演じた役を、僕が演じさせて頂いたという共通点はありますが、ご一緒するのは初めてなので楽しみですね。とても美しいですし、宝塚で見せ方を学ばれてきているところなど、勉強させて頂きたいと思います。凰稀さんが宝塚でトップをされていた『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』を拝見したとき、登場シーンで周りのお客さん達が前のめりになったんです。その凰稀さんと並び立つ。自ら光を放って存在している彼女のトップスターとしてやってきたことと、僕が男としてハーロックとして立てること、その絵が煌びやかな印象で舞台が埋まるんじゃないかと思っています。

漫画の役をやるときは、「どうだ!」ってやるしかないんですよ。そのハッタリも大事だと思うので、楽しんで頂きたいと思います。衣裳などキラキラしたものをつけてもらえる訳じゃないですか。それはテンションあがりますよ!そのワクワクも役に込めておきたいですし、そうでないとお客さんに前のめりになってもらえないと思うんです。宇宙、銀河という壮大な物語なので、負けないぐらいの存在感で圧倒できるようにしたい。そのためにも凰稀さんの存在は有り難いと思います。

ーー今、特に楽しみにしていることはありますか?

僕は台本を最初に見たときの、ファーストインプレッションで、自分が舞台に立つのを感じて、それを大切にしたいんです。今は、映像と声で『銀河鉄道999』の世界を見ていますが、それを台本にしたときに、どういう風に新しく感じるのかが楽しみです。まっさらな台本をひとつずつめくっていく間は、小説のようにすべて自分のわがままで見ることが出来る。この役美味しいなとか、面白いなとか、一読者として楽しむんです。すごく面白い台本ならば、役者がどうであろうと面白いですからね。とても楽しみにしています。

 

鉄郎の人生を、近くでハーロックとして見ていられるのは幸せ

ーー『銀河鉄道999』の原作やアニメを見て、自分の人生と照らし合わせて、感じているもの、得るものはありますか?

僕はハーロックを演じますが、物語は鉄郎の目線で見てしまいますね。物語がどれだけ進んでも、母親が機械伯爵に撃たれて雪のなかに倒れて、「お母さん!」と叫ぶところがどうしても忘れられないんです。様々な愛の形が作品に散りばめられていますが、あのシーンを丁寧に描いている、母親への愛というか、生身のものへの愛、ああいう血の通った繋がりというのは、物語の題材にも発端にもなりますし、忘れられません。鉄郎が機械伯爵に復讐をしにいく題材を描いていても、揺るぎないのは生身の温かい愛や母親との繋がりなど、身近なところに全てあるんだなと思いました。あのシーンが艶かしいほど、より最後に宇宙の壮大さに繋がるんじゃないかと。

ーー鉄郎の母親への愛が、平方さんご自身の思いと繋がってきますか?

僕も母親に対して鉄郎のような気持ちは抱いていますが、男の子って素直にあそこまではいけないと思うんです。でもとても純粋に表れているじゃないですか。あそこまでストレートにやってくれると、見ていて恥ずかしくないんですよね。母親をリスペクトしたり大好きな気持ちだったりを、今も僕は持っていますが、そういう気持ちがいつまでも無くなっていないことにも気づきました。自分自身の話というのは浅はかになってしまいますが、母親から離れて東京に来て、何か揺らぎそうだったり、折れそうになったりしたときの踏ん張りどころに、必ず母親というものがいました。そこは父親ではないんですよね。鉄郎もそうなのではないかと思います。大人になっていく過程が描かれている成長物語ではありますが、結局は母親の愛が忘れられないんだろうなと。そこが物語の動機にもなっていますよね。

単純な話をすれば、僕も東京に来たからには美味しいものを食べさせてあげたいとか、もっといろんな世界や美しいものを見せてあげたいから旅行に連れていきたいと思います。鉄郎は母親が死んでしまったから、そこが復讐心になるわけですよね。だから、母親を傷つけたものに対する憎しみの気持ちはよくわかります。鉄郎のように、あんなに清潔に綺麗には表現出来ないですが、誰しもが持っているものではないかと思います。

あんなに人間らしい鉄郎が羨ましいと思いましたし、ああなりたいとも思いました。アッキーが鉄郎を演じて、この世界を音楽劇で表現したら、お客さんもそう思うんじゃないでしょうか。歌によってより純粋に抽出され、より物語のなかに引き込まれていくのではないかと。男性として生まれて、お母さんを経て、得ていくものがあり、そこに仲間がいる。とても美しいですよね。あんな人生を歩めるものなら歩んでみたい。その鉄郎の人生を、近くでハーロックとして見ていられるのは幸せだなと思います。はやく稽古場でそれを体感して見てみたいです。

ーー楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

明治座で上演出来ることもとても楽しみです。あの空間を『銀河鉄道999』の空間で支配出来るという、とんでもないことをやってのけたいと思いますし、その気概が、画角からはみでるぐらいのことをやりたい。今、そういう気持ちが溢れています。大阪、北九州にも行けるので、観て幸せなだけではなく、自分を懐かしんだり、ノスタルジックな気分にさせてくれたりするような、とても深い作品になると思いますので、ぜひ観に来てください。

 

<リレー質問>
☆中川晃教さんから平方元基さんへ

Q.会う度に成長して大きくなっている元基くんが持っている、日々に抱く小さな願いごとは何ですか?

A.舞台上でみんなが機嫌よく自由にやれるように稽古しているので、これでもかというくらい自由にやりたいと、常日頃からどんな作品でも思っています。あとはものすごく汗をかくので、舞台上で汗をかかないこと!ハーロックとしては、ズレない眼帯と剥がれない傷を手に入れたい!自由にやるあまりに、眼帯がズレてしまうかもしれないので(笑)。

 

☆平方元基さんから染谷俊之さんへ
Q. 舞台で一番楽しい瞬間と一番辛い瞬間はいつですか?