先生からこんなことを聞いた記憶が蘇る・・・
・・・『みんな生涯に一度、自分はどうするかという瞬間が来てるはずなんです。その瞬間に自らの意思で旅立つかどうか、それで運命が変わる。それぞれの旗のもとに、あなたの夢を果たしてほしい!』
・・・『あろうがなかろうが、失敗しようが成功しようが、自分の責任。人のせいには出来ない。「志」というのは、そういうものですよね。だから人の「志」で動いてはいけません。自分の「志」!信念で動け!そうでないと、あいつのせいでこうなったという言い訳になる。言い訳はしたくない。”俺の旗のもとに、俺は自由に生きる” ということなんです。』
・・・本日も、銀河鉄道999生みの親。松本零士先生のお言葉で幕を開けました!皆さん!それぞれの旗のもとに自由に生きていますか!言い訳をしない人生。自らの信念を貫く人生。そんな「志」を胸に夢に邁進していますか!先生のお言葉!本日も胸に染み入りました。ですから、私の「志」は、ただひとつ!このコラムを遂行するのみ~!!
・・・改めまして、先々月の9の付く日の19日より始まりました、銀河鉄道999北九州エクスプレス!車掌役のお宮の松で御座います!この銀河鉄道999北九州エクスプレスは、毎月19日の発車で御座います。前回の北九州エクスプレスでは、北九州に降り立ち、小倉駅から北九州芸術劇場までの北九州を満喫するルート説明。そして、九州最大のイベント!北九州ポップカルチャーフェスティバルでの、初の舞台の宣伝!しかも、そこに、主演の中川晃教さんと松本零士先生のビデオメッセージ!そして、会場に呼ばれた私とメーテル役のハルカちゃんと、あの!クイーン・エメラルダス役で特別出演されます!凰稀かなめ姐さん!宝塚歌劇団六代目宙組トップスター!圧巻の女優!が来ると言う!まだ、会った事も無いのに、お会いする前から武者震いが止まらない!嗚呼~!クイーン・エメラルダスに叱られたい!罵られたい!そんな思いが交錯していた。
・・・あの日、私は、北九州の工業地帯の一角、西港の海岸線の景色をみながら、そんな事を思い、北九州ポップカルチャーフェスティバルのステージに向かっていた。会場に到着し、駐車場から楽屋に通される。北九州一の総合展示場なだけあり、楽屋までの道のりも長い。横切るスタッフも多く、何度会釈をしたのだろう。首が凝り固まったくらいに楽屋に到着した。楽屋は、セパレートされており、今日、一日で出演する、演者さん達が入れ替わり立ち代わり、楽屋を使用しているようだ。独り楽屋に腰をおろし、無音のまま呆然と座りこむ。
机に目をやると、お弁当が用意されている。よく見ると、銀河鉄道999のお弁当だ。これは、駅弁でも見た事無ければ、何処かで売っているのも私は見た事が無い。恐らく特別に今回の為に発注したものだと思われる。表蓋にメーテルと999。サイドには、松本零士先生のプロフィールなどが紹介されている。ふたを開けると、裏蓋に松本零士先生のメーテル入りのサイン。お弁当は、9つにセパレートされ、999を演出している。ど真ん中のめんたいこが九州をアピールしている。自然に箸がのび、あっという間に九種類の九州を九口で平らげる。正に999。素晴らしいお手前でございます。しかし、このまま、このパッケージを捨てるのは、勿体無いと思ってしまった私。パッケージだけでも持ち帰ろうと、中のセパレートされたお弁当のトレーを取り出すと、真ん中に『福岡←→エターナル』の切符を発見。切り取ると、裏にはメーテルの絵が描かれてあり、鉄道チケットに成ると言う細かい心配り。しかも、エターナルの場所は、未だに記されていない、松本零士先生にしか解らない、未曾有の大青雲!それを探し求めるのが夢であり、「志」なのであります!そんな小粋なパッケージを捨てる訳にはいきません。丁寧に折り畳み、クリアファイルに入れ、バックの中へ。
お腹も落ち着き、再び、無音のまま宇宙を彷徨うかのように呆然と座りこむ。数分後。その静寂を打ち破るドアの音。プロデューサーが息をきらし、入ってくる。『楽屋にご挨拶いく?ハルカさんは、面識あるけど、凰稀かなめさんは、初めてでしょ!』突然の事だったが言い知れぬ不安が一気にこみ上げる。いつも冷静なプロデューサーの、異様に上ずっている声。私を見る焦点の合っていない目。開けたドアノブにしたたる手のひらの汗。これは、私が洞察するに・・・
・・・『あの!宝塚劇団六代目宙組トップスター!習い事はしていなかったが、歌も芝居も好きな学生時代を過ごし、将来はモデルか俳優になろうと思っていたというあのお方。中学3年生の時にテレビで宝塚を知り、初めて舞台を見た後、すぐに東京アートスクールに通い一発で宝塚音楽学校に合格。愛称『てる』。超有名バンドのヴォーカリストに似ていることから貴城けいさんが名付けたという。2000年:宝塚歌劇団入団、雪組配属。2009年:星組に異動。2011年:宙組に異動。2012年7月2日付で六代目宙組トップスターに就任。お披露目公演は『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』。ラインハルト・フォン・ローエングラム役。もう正にこの時から銀河の申し子!舞台『銀河鉄道999」クイーン・エメラルダス役に成るべくして成った唯一無二の逸材の誕生!只今!テレビ朝日帯ドラマ『トットちゃん!』エミー役にて、絶賛放送中!』・・・って言う事なのだろう。
即ち!
『お前のような、お宮の松の分際でお宮の松のくせして、銀河の英雄ラインハルト・フォン・ローエングラム様であり、女王でもあります、クイーン・エメラルダス様にご挨拶も無く、頭を足れる事も無く、よくも、まぁ~!のうのうと弁当なんか食えよったな~!飯よりも先に凰稀かなめ姐さんに挨拶やろがい~!』
・・・って事なのだ。
私は、そう洞察した瞬間、背筋を伸ばし、直ぐさま、ドアノブの汗を拭き取りながら、プロデューサーに目を合わせ、『改めまして!凰稀かなめ公にお目通り、宜しくお願い申し上げます!』と懇願。プロデューサーも直ぐさま、解ってくれたか!と息をのみ、2人、神妙な面持ちで楽屋のドアをたたく。
入りますと、左側にメーテル役ハルカ様の楽屋。右側に凰稀かなめ姐さんの楽屋。踏み込みますとセパレートしているだけで、ドアが無い状態。前進しながら視界に入って来たのは、右側、凰稀かなめ姐さんの座っている背中。そのまま背中に向かいお声をかけようとしましたら、左側から不意に『お宮さん!おはようございます!』と、ハルカ様のご挨拶!ハルカ様!挨拶早い~!しかも、瞬発的に立って、もう、ハルカ様、私の目の前に居る~。このまま、ハルカ様に挨拶するとかなめ姐さんを後回しにする事に成ってしまう。それは、避けたい。出来る事なら、先にかなめ姐さんに挨拶したい!でも、ハルカ様は、既に目の前だし、挨拶までしてくれているのに無視するのは、避けたい。そこで少し小声でハルカ様に「おお~。久しぶり!挨拶とか大丈夫だから。今日は、宜しくね!」この挨拶と同時に右に居直り、背中越しのかなめ姐さんに声をかければ大丈夫と決め、右に全力の反転を決めた。
・・・?
・・・おかしい。
背中が見えない。
目の前が真っ暗だ。
不穏な空気を感じ上を見上げながら後ずさる。
そこには、既に正体した、凰稀かなめ様がそびえ立ち、私を見下ろしていた。
黒いお召し物は、気品があり、見るものを覆い尽くすほどだ。そのまま、その漆黒に吸い込まれてしまいそうな、出で立ち。正にクイーン・エメラルダス!既に173センチの長身にブーツを履かれ、180センチを越えているのだがそれ以上に高く感じる。これは、本人がかもし出すオウラ。気品。品格。質の良い上品さ。全てがかなめ姐さんを大きくしている。一瞬、黒いベールで身を隠し、竹馬に乗ってんのかな?と錯覚させるほどだ。でも、歩き方も颯爽としているので竹馬でない事は、間違いなさそうだ。となれば、やはり、今までに培ってきた、エネルギーが全面に溢れ出て、周囲のモノ全てをかなめ色に染め凌駕している!
既に私の凝り固まっていた首も見上げすぎて、コリが取れている!凰稀エメルギーの賜物だ!そんな、かなめエネルギーを感じながら、かなめ色に染まり、今にも吸い込まれてしまいそうな時に!
『凰稀かなめです。宜しくお願い致します!』
と、耳でなく脳天に直接語りかけてきた。凄まじい!観音様のような、語りかけ!後光が差して顔が見えないくらいに眩しい!頭を下げながら、咄嗟に出てきた言葉は
『お宮の松です!よろしくお願い申し上げます!姐さん!』
私も何故、そう口にしたのか意識がない。自然と口にしたのが“姐さん”だった。これは、もう、取り消す事が出来ない。勿論、私の方が年上だ。しかし、初対面でのこのやり取りで凰稀かなめ姐さんとお宮の松のパワーバランスは、決まった。これは、松本零士先生が言う遺伝子レベルで過去まで遡り、決まっていた事だと私は、思う。
恐らく、王としもべ。
女王蜂と働き蜂。
ビートたけしと弟子。
くらいの事なのだ。すると、そう決した瞬間に返す刀で返された御言葉が
『佐藤 勝さん。ヨロシク。』
凄い!私の本名だ。既に調べているのだ。僕は、半分以上ハートがとろけた。人垂らしとは、こう言う事だ。調べなくても良い私への気遣い。私も心の中で『◯◯◯◯(本名)姐さん!恐るべし!』と叫んだが口に出す勇気は、無かった。その後も、北九州が地元でと話を展開させてみたが、かなめ姐さんには、何もヒットもする事なく、本番を向かえる。ステージ袖にスタンバイし、北九州北橋市長と井上議長にご挨拶!なんと、車掌と鉄郎の格好にコスプレして、スタッフの女性にメーテルの格好をさせてのお出迎え。
公務でのコスプレ姿の市長と議長を見るのは、初めてだ。このフェスに相当な力を入れているのが手に取るように分かる。舞台袖で写真撮影して、本番のステージ。さっきまでは、凰稀かなめに初対面でハートを掴まれ、喰われてしまったが、ここのステージは、私の持ち家!私に任せてもらおうじゃないか!とクイーン・エメラダス号の舵取りをがっつりやってやろうと思いつつ、会場ステージ中央に呼ばれる。並んでいますとメインの司会者が順番に紹介してくれる。順に、ハルカちゃん、私と紹介され、最後に凰稀かなめ姐さん!紹介された瞬間に大半のお客様が大拍手。そうなのだ。ほとんどのお客様が凰稀かなめ姐さんのファンでわざわざ北九州まで見に来ているのだ。
それが解った瞬間、私は、へりくだった。頭を下げ、ファンの方々をいじり、かなめ姐さんに焦点を合わせ、話しを展開した。かなめ姐さんも私に『おだまり!』っと乗ってくれる。私は、帆先をかなめ姐さんに向け舵を切った!話しが尻つぼみに成り出すとかなめ姐さんに振った!どっと湧いた。困った時の凰稀かなめ姐さん!全てのトークのかなめに成ってしまった!そして、会場は、かなめ色に染まり、かなめ一色と成った。私は、凰稀かなめと言う波に乗り、助けられた。クイーン・エメラルダス号と言う大船に乗り、悔やむ事の無い素晴らしい航海に成った。テコでも動かない鋼の強船クイーン・エメラルダス号の船員に成れた事に喜びを感じながら、ステージ終了。
外は、日も暮れ、落ち着くのかと思いきや、そのまま、メーテルとクイーン・エメラルダスは、東京に船出だと言う。私は、実家に留まり、雑務が残っている。早速、船から降ろされた私。しかし、最後くらいは、見送ろうとクイーン・エメラルダス号と言う名の送迎車へ向かう途中、船出の門出を祝うかのように空に花火があがり出す。
北九州わっしょい百万夏祭りで上がる予定だった花火が台風のため上がらず、日の目を見なかった花火が北九州の夜空に今、上がっている。日の目を見たその花火は、メーテルとクイーン・エメラルダスを笑顔で送り出す業火のようにはじけ飛んでいる。花火を背にしたクイーン・エメラルダスは、毘沙門天様のような後光に見え、やはり眩しい。車に乗り込むメーテルとクイーン・エメラルダス。見えなくなるまで声を荒げ、見送ると、ブレーキランプが4回点滅『お・だ・ま・り!』のサインだ。私は、口を閉じ、クイーン・エメラルダス号に頭を垂れ見送った。
帰りにふと、プロデューサーに楽屋挨拶前に何であんなに慌てていたのかと確認すると『トイレに行きたかったから』との答え。・・・そう。私の洞察は、間違っていた。洞察力ゼロだ。全ては、私が造り出した幻想。単純に凰稀かなめさんは、この上なく優しい人だったのだ。・・・が!しかし!私は、これからも、かなめ姐さんと呼ぶ。いや、もう、兄さんと言っても過言ではない!私の「志」は、そこにある!呼べないのなら、心で叫ぶ!嗚呼~!ありがとう!凰稀かなめ姐さん!ありがとう!クイーン・エメラルダス~!
・・・果たして、これから先、私は、クイーン・エメラルダスに遭遇する事が出来るのか!?また、今一度、直接『おだまり!』と、言われたい!叱られたい!罵られたい!そんな「志」を胸に!車掌と言う旗のもとに!・・・来月の19日までの間、銀河鉄道999北九州エクスプレス!発車致します~!